2019/11/19 22:30

愛用の硯がだんだん重くなってきた。使用前後に洗うのだけれど、それ自体は煩わしいことではない。むしろ水を喜ぶような硯の面を眺めるのは楽しい。創作意欲もそこで湧いたりする。

これまで使ってきたのは端渓硯。古硯でも名硯でもない。新端渓で、赤紫色。裏に火球が走ったような流紋があって、私かに「流星硯」「火球硯」と天文好きは嬉しがっている。
縦 20cm、横 13cm、重さ 1.6kg。
大きさに不自由はなく、墨の下りはいいし、落ちるのも速やか。ただ、重い。葉書に描くようになっての使用頻度は高く、逆に磨墨量は少ない。ちょっとの墨で済むので、小さな硯が欲しくなった。
そこで探していたところ手頃な小硯を見つけた。澄泥硯で、しかも風の字形をした「風字硯」。風羅の世界を描くにぴったりである。



縦 12.8cm、横 8.5cm、重さ 380g。
やって来たのが、獅子座流星群の18日極大の頃。それで2001年11月19日未明の流星雨を思い出したので、描き初めをその頃とした。
筆はタイサンボクの実。まず、風という字でスタート。



それから〈ふうら〉の世界。



字や絵の出来栄えはともかく、新しい硯は墨の下りも良さそうだ。松壽堂のへら墨を磨ってみたところ、よく発色する。硯の陸が狭いので大きな墨は窮屈で、なにかと墨を作る勝手は違ってくるのだろうが、まずは相性が合って安堵した。ほどよい大きさと重さは、掌に置いて心地よい。