2019/11/23 23:22

野路菊は兵庫県のシンボルの花です。

秋の終わり頃から咲いて、竜脳菊と共に花の淋しくなる季節を彩ってくれます。それまでは野紺菊、嫁菜たち。ちょっと山に入れば白山菊、白嫁菜。いろいろな種類のある野菊ですが、名前が判ってくると、また出会いも一入です。

散歩道で摘んできた野路菊の赤い蕾が開いた頃に、ちょっと文房に来てもらいました。以前は花の終わった後で筆に使いましたが、墨に浸しても茎の方なら構わず花を着けるので、いまは描きたい時に筆にお願いしています。



十枚余描いた中の最後の方の一枚です。野路菊は茎が硬く、柔らかい線を出すには苦労します。硬いなら硬い線でいいのですけれども、野菊のイメージも鑑みると……。
でも、なぜ雲なのか?
前にも一度雲を描いたな、と調べると、これもまた昨年十一月の野路菊の筆によるものでした。「雲」という字を乗っけた杖をつく〈ふうら〉の絵。
たぶん、小六月とか、小春日和とかいう日がしみじみありがたく、そういう日の雲がとてもいいのではないか…と解釈しました。



野菊の花びらを鳥か天使の羽根のように背にした〈ふうら〉。これも小春のうれしさにあるのかもしれません。



今年はもう凩が吹きました。冬の口笛も聴こえます。
上は初めて野路菊を筆にした二年前の葉書です。
やや花びらが捩れてしまいましたが、即興のフレーズを書いておくと:

のじぎくの/花のおわり/うす桃色の/おもいでと/しろい/忘却/風の呼吸に/うながされて/未来への/一本道を/とぽとぽと/日溜りの底の/石くれひとつ/枯葉と/言葉と/落葉して/くるくる回る/冬のタンゴ

18枚の言葉の花びらでした。